リスクで考える我が家の耐震安全

新築や耐震改修のための設計をされていると、「大きな地震が来ても大丈夫?」としばしば聞かれることと思います。このようなとき、たいていは「建築基準法を守っていますから大丈夫・安全です。」と答えているのではないでしょうか。しかし、何が「大丈夫」なのでしょうか。また、どうして「安全」と言い切れるのでしょうか。確かに、建築基準法を満足する、すなわち、いわゆる耐震強度が1.0以上ならば「安全」、未満ならば「危険」と二値論的に判断することは、とても分かり易く、適法/違法性も明快に判断ができます。しかし、実際のところ、耐震強度が1.0ならば安全で、0.99に下がるととたんに危険となってしまうわけではありません。

一寸先は闇といわれるように、将来を確実に予測することはできません。すなわち、「絶対安全は不可能」なのです。たとえ耐震基準を満たしていても倒壊する可能性はゼロではありません。一方、耐震強度が1.0を下回っていても必ず倒壊するというわけでもなく、単に、耐震強度が低いほど、倒壊する可能性が高くなるのです。すなわち、安全性は、安全か安全でないかの二値論ではなく、連続量として取り扱うべきものなのです。では、ガイドラインも無く、どこに「設計値」を定めればよいのでしょうか。そこで、この問いに答えるべく、本ツールを開発しました。

このツールでは、いろいろな「設計値」に対して、いくつかの想定地震のいずれかが起こった場合や、あるいは、地震が起こるか起こらないかの可能性を考慮した今後30年間に「命を落とすこと」や「建物の倒壊」といった好ましくないことが起こる可能性を確率で「危険度」という指標で連続的に評価することができます。どの「設計値」を選択するかについては、個々人の価値観が大きく影響しますから、もちろん数字だけがすべてではありません。しかし、数字で表すことにより、様々な選択肢に伴うリスクや便益、リスク低減に伴う費用の比較をすることができます。本ツールは、既存木造住宅の耐震リフォームを念頭に作ってありますが、もちろん新築の木造住宅にも適用可能ですので、日々の業務にご活用いただければ幸いです。



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